映画「プロミスト・ランド」

8月22日(金)、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー!

マット・デイモン主演 ガス・ヴァン・サント監督

世界を塗り替えるエネルギー最前線は田舎町の牧場にあった
ベン・アフレックと共同で執筆した『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)の脚本でアカデミー賞Rを受賞し、俳優としてもスターの階段を駆け上がることになったマット・デイモン。同じく『グッド・ウィル・ハンティング』でアカデミー賞監督賞候補になり、『エレファント』(03)や『ミルク』(08) など数々の名作を生み出してきたガス・ヴァン・サント。

この17年、アメリカ映画界を牽引してきた2人が、脚本家兼主演と監督として三度目のタッグを組み、世界をあっと言わせる問題作を作り上げた。

アメリカでナショナル・ボード・オブ・レビューの表現の自由賞、ヨーロッパでベルリン国際映画祭のスペシャルメンションに輝いた本作は、社会派のテーマに裏打ちされたヒューマンドラマ。

出世コースをまっしぐらに歩んできた主人公スティーヴが、仕事への信念を揺るがす出来事に遭遇したことをきっかけに、人生にとって大切なものは何かを見つめ直し、新たな生き方を模索していく姿を、アメリカがいま直面しているエネルギー問題を背景に描いた、心揺さぶる感動作だ。

スティーヴ役のマット・デイモンは、同じく出演のジョン・クラシンスキーと共同で脚本を執筆。それを、デイモンは自身の手で監督するつもりだったが、スケジュールの都合で断念せざるをえなくなり、盟友のガス・ヴァン・サントに助けを求めた。脚本を読んだヴァン・サントはすぐに快諾。

こうして映画化が実現した本作は、奇しくも『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』と同じ製作過程をたどることになった。キャストには『ファーゴ』のオスカー女優フランシス・マクドーマンド、『イントゥ・ザ・ワイルド』でアカデミー賞候補になったハル・ホルブルックら実力派がそろった。

大手エネルギー会社の幹部候補であるスティーヴ(マット・デイモン)は、マッキンリーという農場以外はなにもない田舎町に、仕事のパートナーのスー(フランシス・マクドーマンド)とともにやってくる。

マッキンリーには良質のシェールガスが埋蔵されており、
近年の不況に大きな影響を受けた農場主たちから、
相場より安く採掘権を買い占めるためだった。
スティーヴは町の財政再建の救世主として迎えられたが、
予期せぬ障害に行く手を阻まれる。

採掘に反対する科学教師(ハル・ホルブルック)と環境活動家(ジョン・クラシンスキー)が現れ町の人々を説得、採掘の賛否は住民投票によって決められることになった。さらにスティーヴは仕事への信念と情熱を根本から揺るがすような、衝撃の真実を知ることになり・・・。

ふと訪れた町で、図らずも自分の生き方を見つめ直す必要に迫られるスティーヴ。果たして彼はどんな決断を下すのか?

マット・デイモン(スティーヴ・バトラー/製作・脚本)

 幼なじみの親友ベン・アフレックと共同で脚本を執筆し、主演もつとめた『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)でアカデミー賞の脚本賞と主演男優賞にノミネート。前者を受賞し、一躍世界の注目を集めた。その後、ゴールデン・グローブ賞候補になった『リプリー』(99)や、『プライベート・ライアン』(98)などに出演し、スター街道を躍進。オール・スター・キャストの『オーシャンズ11』(01)シリーズと、本格スパイ・アクション『ボーン・アイデンティティー』(02)シリーズを大ヒットさせ、ハリウッドのトップ・スターの座を不動のものにした。09年には、『インビクタス/負けざる者たち』でアカデミー賞の助演男優賞にノミネート。同作と『インフォーマント!』(09)でゴールデン・グローブ賞にノミネートされた。また、『恋するリベラーチェ』(13)では英アカデミー賞にノミネートされた。ベン・アフレックをパートナーに立ち上げたパール・ストリート・フィルムズなどを通じて、映画を含む様々なメディアの企画開発や製作も積極的に行っている。

ジョン・クラシンスキー(ダスティン・ノーブル/製作・脚本)

 全米で大人気を博したドラマ・シリーズ「ザ・オフィス」のレギュラーとして、2007年と2008年の俳優組合賞のコメディシリーズ・アンサンブル賞を受賞した。映画デビューは2002年。以降、『愛についてのキンゼイ・レポート』(04)、『ドリームガールズ』(06)、『ライセンス・トゥ・ウェディング』(07)、『恋するベーカリー』(09)、『だれもがクジラを愛してる。』(12)などに出演。アニメの『シュレック3』(07)、『モンスターズ・ユニバーシティ』(13)、アメリカ版『風立ちぬ』(13)ではヴォイス・キャストを務めた。また、2009年には、デヴィッド・フォスター・ウォレスの短編を映画化した『Brief Interviews with Hideous Men』で脚本&監督デビューを飾った。

フランシス・マクドーマンド(スー・トマソン)

 コーエン兄弟の『ブラッド・シンプル』(84)で映画デビューし、アラン・パーカー監督の『ミシシッピー・バーニング』(88)でアカデミー賞の助演女優賞にノミネート。以降、存在感のある演技派女優として活躍を続け、『ファーゴ』(96)でオスカー女優の仲間入りを果たした。アカデミー賞は、『あの頃ペニー・レインと』(00)と『スタンドアップ』(05)でも助演女優賞にノミネートされている。近年の主な出演作に『恋愛適齢期』(03)、『イーオン・フラックス』(05)、『バーン・アフター・リーディング』(08)、『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』(11)、『ムーンライズ・キングダム』(12)などがある。

ローズマリー・デウィット(アリス)

 ジョナサン・デミ監督の『レイチェルの結婚』(08)でタイトルロールのレイチェルを演じ、サテライト賞、トロント映画批評家協会賞など数々の助演女優賞を受賞した。また、エミリー・ブラントと共演した『ラブ・トライアングル』(11・未)でゴッサム賞を受賞し、インディペンデント・スピリット賞の助演女優賞にもノミネートされた。その他の出演作に、『シンデレラマン』(05)、『カンパニー・メン』(10)、『私だけのハッピー・エンディング』(11)などがある。

ハル・ホルブルック(フランク・イェーツ)

 1966年に『グループ』で映画デビュー。以来、半世紀近いキャリアの中で120本を超える映画・TVに出演してきた。主な出演作は、『ダーティハリー2』(73)、『大統領の陰謀』(76)、『カプリコン・1』(77)、『ジュリア』(77)、『ザ・フォッグ』(80)、『ウォール街』(87)、『ザ・ファーム/法律事務所』(93)、『ザ・ダイバー』(00)、『マジェスティック』(01)、『恋人たちのパレード』(11)、『リンカーン』(12)など。2007年には、ショーン・ペン監督の『イントゥ・ザ・ワイルド』でアカデミー賞をはじめとする数々の助演男優賞にノミネートされた。

ガス・ヴァン・サント(監督・製作総指揮)

 米ケンタッキー州ルイビルの出身。絵画と映画を学んだ後、CM製作を経て『マラノーチェ』(85)で映画デビュー。『ドラッグストア・カウボーイ』(89)でNY映画批評家協会賞の脚本賞、LA批評家協会賞の脚本賞、全米映画批評家協会賞の脚本賞と監督賞などを受賞し、気鋭の映画作家として注目を集めた。その後はハリウッドの若手スターを主演に迎え、『マイ・プライベート・アイダホ』(91)、『カウガール・ブルース』(93)、『誘う女』(95)を発表。マット・デイモン&ベン・アフレックの脚本をデイモンの主演で映画化した『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)でアカデミー賞の監督賞にノミネートされた。同賞には、ハーヴィー・ミルクの半生を描いた『ミルク』(08)でもノミネート。また、コロンバイン高校の銃乱射事件を題材にした『エレファント』(03)では、カンヌ国際映画祭のパルム・ドールと監督賞を受賞した。その他の監督作は、『ラストデイズ』(05)、『パリ、ジュテーム』(06/オムニバス)、『パラノイドパーク』(07)、『永遠の僕たち』(11)など。
マット・デイモンにとって、ジョン・クラシンスキーとの共同執筆作業は昔を思い出させる懐かしい体験だった。

デイモン「ジョンは非常に頭の回転が速い。僕たちは一緒によく笑い、執筆作業はどんどん進んだ。ベン・アフレックとの共同作業を思い起こさせたよ。あの時とすごく似た感覚で、何より楽しかったね。あんなに楽しいものだということを、長い間忘れていたよ」

クラシンスキー「マットが『幸せへのキセキ』を撮影している間も、僕らは週末ごとに会ったんだ。土曜日も日曜日も、彼の子供やお互いの妻たちがいるところで、一日中、執筆作業に費やした」

デイモン「平日は、ジョンも僕もそれぞれの仕事に戻り、休憩時間に書きなぐったメモやアイデアを読みふけった。そして、週末になると再び会って何度も何度も書き直しを重ねていった」

そうして生み出された脚本について「身近にいそうなキャラクターが登場する誰でも共感できるストーリーだ」とデイモンは言う。マッキンリーという架空の田舎町を舞台にした物語は、都会からそこへやって来た大手エネルギー会社の社員と、彼にシェールガスの採掘権を貸与するかどうかで揺れる農場主たちの葛藤に焦点を当てる。

クラシンスキー「これは現在、アメリカの多くのコミュニティを分断している複雑な問題なんだよ。シェールガスの採掘というのは、現代アメリカのアイデンティティを問うストーリーの背景としてふさわしい問題だった。これは、得るものも失うものも、両方がとてつもなく大きい賭けだからね」  

デイモンとクラシンスキーの脚本は、シェールガスの採掘について賛否両方の立場から描き、いくつかの問題点を指摘している。しかしその是非を問うものではなく、中立を保っている。

クラシンスキー「映画を観てくれた観客が、自分なりの決断を下せばいい。僕たちの目的は、映画のキャラクターが真剣に悩みながらも自分なりの決断を下していく姿を、笑いと感動を織り交ぜながら描き出しだしていくことだからね」

デイモン「この映画は、何らかの答えを引き出そうとしているわけではない。とはいえ、きっと希望の持てる答えがあると僕は信じているけれどね」

そんな中、映画化が暗礁に乗り上げる事態が発生した。デイモンは自分で監督するつもりでいたのだが、出演作のスケジュールの変更により監督を務めることが無理だと判明したのだ。

「このことを電話でジョンに告げるのはつらいことだった」とデイモンは振り返る。

クラシンスキーへの電話の翌朝、デイモンは家族を連れて旅行に出かけた。彼は飛行機が滑走路で待機している間に、最も信頼している人物であるガス・ヴァン・サントにメールを送り、抱えているジレンマを告白した。「返信はすぐに来た。『君たちが書いている脚本を読みたい』とね」

ヴァン・サント「あの朝マットが連絡してくる前から、脚本には興味を持っていた。彼がなんらかのプロジェクトに取り組んでいることは知っていた。彼から連絡をもらって、手を貸そうと思ったんだ」

デイモン「飛行機が離陸する前に彼にメールで脚本を送り、携帯の電源を切った。数時間後に着陸した時には、すでに監督をしたいという、ガスからの返信が入っていたんだ。僕はすぐさまジョンに『監督が見つかった。ただの監督じゃない。最高の監督だ』と知らせた」

クラシンスキー「興奮したよ。吐いて気絶したかも。マサチューセッツで生まれ育った僕の体に、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』は刺青のように刻み込まれていたからね」

ヴァン・サント「脚本を読みながら、これまでマットが書いた脚本との類似点に気づいた。彼とジョンとの共同作業がとてもうまくいっているのだと感じたよ。『イエス』と言うのに迷いはなかった」