映画誕生秘話

マット・デイモンにとって、ジョン・クラシンスキーとの共同執筆作業は昔を思い出させる懐かしい体験だった。
デイモン「ジョンは非常に頭の回転が速い。僕たちは一緒によく笑い、執筆作業はどんどん進んだ。ベン・アフレックとの共同作業を思い起こさせたよ。あの時とすごく似た感覚で、何より楽しかったね。あんなに楽しいものだということを、長い間忘れていたよ」
クラシンスキー「マットが『幸せへのキセキ』を撮影している間も、僕らは週末ごとに会ったんだ。土曜日も日曜日も、彼の子供やお互いの妻たちがいるところで、一日中、執筆作業に費やした」
デイモン「平日は、ジョンも僕もそれぞれの仕事に戻り、休憩時間に書きなぐったメモやアイデアを読みふけった。そして、週末になると再び会って何度も何度も書き直しを重ねていった」
そうして生み出された脚本について「身近にいそうなキャラクターが登場する誰でも共感できるストーリーだ」とデイモンは言う。マッキンリーという架空の田舎町を舞台にした物語は、都会からそこへやって来た大手エネルギー会社の社員と、彼にシェールガスの採掘権を貸与するかどうかで揺れる農場主たちの葛藤に焦点を当てる。
クラシンスキー「これは現在、アメリカの多くのコミュニティを分断している複雑な問題なんだよ。シェールガスの採掘というのは、現代アメリカのアイデンティティを問うストーリーの背景としてふさわしい問題だった。これは、得るものも失うものも、両方がとてつもなく大きい賭けだからね」
デイモンとクラシンスキーの脚本は、シェールガスの採掘について賛否両方の立場から描き、いくつかの問題点を指摘している。しかしその是非を問うものではなく、中立を保っている。
クラシンスキー「映画を観てくれた観客が、自分なりの決断を下せばいい。僕たちの目的は、映画のキャラクターが真剣に悩みながらも自分なりの決断を下していく姿を、笑いと感動を織り交ぜながら描き出しだしていくことだからね」
デイモン「この映画は、何らかの答えを引き出そうとしているわけではない。とはいえ、きっと希望の持てる答えがあると僕は信じているけれどね」

そんな中、映画化が暗礁に乗り上げる事態が発生した。デイモンは自分で監督するつもりでいたのだが、出演作のスケジュールの変更により監督を務めることが無理だと判明したのだ。「このことを電話でジョンに告げるのはつらいことだった」とデイモンは振り返る。クラシンスキーへの電話の翌朝、デイモンは家族を連れて旅行に出かけた。彼は飛行機が滑走路で待機している間に、最も信頼している人物であるガス・ヴァン・サントにメールを送り、抱えているジレンマを告白した。「返信はすぐに来た。『君たちが書いている脚本を読みたい』とね」
ヴァン・サント「あの朝マットが連絡してくる前から、脚本には興味を持っていた。彼がなんらかのプロジェクトに取り組んでいることは知っていた。彼から連絡をもらって、手を貸そうと思ったんだ」
デイモン「飛行機が離陸する前に彼にメールで脚本を送り、携帯の電源を切った。数時間後に着陸した時には、すでに監督をしたいという、ガスからの返信が入っていたんだ。僕はすぐさまジョンに『監督が見つかった。ただの監督じゃない。最高の監督だ』と知らせた」
クラシンスキー「興奮したよ。吐いて気絶したかも。マサチューセッツで生まれ育った僕の体に、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』は刺青のように刻み込まれていたからね」
ヴァン・サント「脚本を読みながら、これまでマットが書いた脚本との類似点に気づいた。彼とジョンとの共同作業がとてもうまくいっているのだと感じたよ。『イエス』と言うのに迷いはなかった」